
イベントはまだまだ続きます。
燧灘に入って30分ほどすると、前方にベージュの大型フェリーが見えてきました。この日午前に神戸を出帆した下りの臨時便「ニューながと」です。
瀬戸内海航路のフェリーはほとんどが夜便のため、このような僚船同士のすれ違いはいつも深夜です。今回の臨時便は、東航船と西航船の距離が離れてしまう来島海峡と備讃瀬戸北・南航路のちょうど中間、燧灘で間近にすれ違えるように、さらに上り便は瀬戸大橋、下り便はしまなみ海道付近で夕暮れを迎えるように、という心憎い演出が「午前10時出帆」というスケジュールに隠されています。

瀬戸内らしい穏やかな中での大型フェリーのすれ違いには、太平洋フェリーのような外洋フェリー同士のすれ違いに見られる豪快さはありません。けれどもそこには「船旅の感動の原点」を感じさせる何かがある。デッキに集まった人たちが互いに手を振りあい写真を撮りあう。船旅ならでは、いや、船旅でしか体験できない貴重な風景です。

夕暮れ間近の瀬戸内海、僚船を見送ると備讃瀬戸が近づいてきます。落ち着く間もない、それが逆に楽しい素晴らしい航海はまだまだ続きます。
ちぃむ瀬木寄瀬